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大事件の前に必ず小事件あり | 地震予知・予測なら「予知するアンテナ」関東版

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大事件の前に必ず小事件あり

 数日前届いた防災・危機管理情報メルマガの目次の中に、いささか気になる表題のタイトルがあった。ある人物を紹介するものだが、土木・建築事業というまったく異なる分野での人物の話だ。高崎哲郎さんという方の書かれた記事で、取り扱っている人物の名前は青山 士(あきら)さんだ。


 多分土木工学分野では誰もが知る御高名な方だと察するが、わたしのような電気・電子工学の出身者にとっては全く存じあげない人なのだが、彼のタイトルの発言がまさしく私たちの従事している地震予知の本質そのものを言い当てられていることから驚いた次第だ。


 彼の論点は明確で、「大事件の前に小事件がある」というものだ。「小事件をすばやく、注意深く見逃すことなく捉えれば、大事件には絶対ならない」と。実はこの逸話には次のような大事件が背景にあったのだ。1927年6月、当時の内務省(内務省のカバーする業務は多岐にわたり、現在では総務省、警察庁、国土交通省,厚生労働省を含む)土木局を震え上がらせる大事件が勃発した。日本一の大河、信濃川に巨額を投じて作られた大河津分水の大堰が梅雨の豪雨で破壊されたのだ。しかも悪いことに、完成してわずか5年しか経っていなかったのだ。


 その当時荒川放水路の主任技師だった青山氏は、一報を聞き同分水の設計ミスや監視・管理の手抜かりなどを厳しく批判し、タイトルの発言となったのだ。今日でもこの類の事象はいろいろ起きているが、いつもお役所の弁解は「想定外」と言うもので、自分たちの非を認めようとはしないのが常ではないか。しかるに、この技術官僚青山氏はお役人発言をするのではなく、技術屋の視点から「小事件は救いを求める自然からのシグナルだ」と声を荒げて同僚や部下に言ったという。幸い復旧工事は4年後に完成し、大河津分水路の脇にある補修工事竣工記念碑の碑文には、表には「万象に天意を覚(さとる)る者は幸いなり」、裏には「人類の為 国の為」と、彼の思想が顕著に刻まれているという。是非一度訪ねたいものだ。


重要な事は、青山氏が土木建造物においても破壊の前には予兆がある事を理解されていたことだ。私たちは地震予知に従事し、地震という自然現象を相手としているが、破壊現象という観点からみれば、土木建造物も地震もストレスに対してはまったく同じ振る舞いをすると言えるのではないか。


 さらに興味を持って調べると、同氏は東大卒業後渡米、パナマ運河建設にも携わった唯一の日本人だ。日露戦争で日本が勝利した頃からアメリカ、中南米では大変な反日運動が起こっている状況下でのパナマ運河建設への参加であり、なんと勇気ある、高い信念を持った日本人がいたことを誇りに思えませんか。

<予知するアンテナから>
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