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アメリカ人気象学者との久しぶりの再会 | 地震予知・予測なら「予知するアンテナ」関東版

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アメリカ人気象学者との久しぶりの再会

 先週土曜日(4月15日)東京で是非会いたいとの突然の電子メールが入った。アメリカ人気象学者アール・ウィリアムズ博士だ。マサチューセッツ工科大学(MIT)の所属だ。雷も含め幅広く気象の研究をされており、世界的に見ても最も優秀な気象学者だと思う。4月12日~14日上越での“冬期雷”に関する国際会議で来日しており、帰路東京にて“会って話したい”との事。土日にはよく地震予知の講演会だったりするのだが、幸いにその予定もなかったため、昼過ぎ東京駅に出迎え、あるレストランで数時間話した。私は最近国際会議に出掛けないため、何年振りの再会で、積もる話に花が咲いた。雷、地震予知などの科学的な話題から、トランプ政権などの政治的なものにも及んだ。


とりわけ彼が興奮気味に話したのは、現在ではELF(extremely low frequency、周波数で3kHz以下だが、重要なのは1-50Hz)観測点が世界中で30ヶ所にものぼることだ。ELF帯の主たる現象はシューマン共振で、赤道帯の雷活動により電離層・大地間の空洞共振が起きるものだ。その共振周波数は8, 14, 20 Hzだ。シューマン教授の予言が1952年、1960~70年代がELF研究の第1活動期であり、世界的に5-6か所のELF観測点が設立された。一つが名大空電研究所の鳥取であり、米国ではMITのRhode Islandである。しかし、1980年代に入り、このELF観測では世界雷などの全般的な理解は得られたものの、その後の大きな発展は見込めないとして、完全にその研究が休止したのだ。だが1990年代に入り、この古いテーマに新しい命を吹き込む二つの事象が起こった。まず第一はウィリアムズ博士による1992年の論文だ。ELFシューマン共振の強度が赤道帯の雷活動を反映し、地球温暖化のモニターに使用できるのではとの趣旨だ。地球温暖化が叫ばれ始めた時期だった。第2番目は、落雷(特に正極性落雷)時に、上空の中間圏でスプライトという発光現象が起き、同時に巨大振幅のELF電波が発生することがわかったのだ。大気圏での雷が上空の電離圏にまで及ぶとして宇宙研究者も大いに注目したのだ。こんな中、1992年サンクトペテルブルク(ロシア)で国際大気電気学会が開かれ、アール、サシャ ニコラエンコ、私が会食し、再度ELF観測を世界的に再開することで合意し、米国セクターはMITのRhode Island、日本セクターは早川が北海道母子里にて、欧州セクターはレクタにてニコラエンコがELF観測を始めたのだ。これが、実は近年のELF黄金期のきっかけなのだ。


 更に、私たちのもう一つの重要な貢献は世界多点で同時観測されたシューマン共振データを用いて、その時刻の世界雷分布を導出する逆変換手法を提案しているのだ(Shvets and Hayakawa、2014)。将来この手法(またMITグループは別な逆変換手法を開発中)を用いると、世界雷分布を“実時間”で監視することが出来るようになる。画期的なことだ。人工衛星からの雷観測は高価であると同時に衛星直下の雷しか把握出来ないという欠点がある。世界多点でのELF電波連続観測を用いて、長期的には地球温暖化を監視し、また短期的には極端気象など地球環境の監視・予測が可能となることが期待される。

<予知するアンテナから>
電波は地震も含め、自然に敏感だ