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地震の前の静けさ | 地震予知・予測なら「予知するアンテナ」関東版

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地震の前の静けさ

 私の新著「直下型地震 誰でも予知はできる 生き残るための戦略」(OROCO Planning社、2017年7月)の第2章では「歴史から地震を学ぶ」と題して、過去の大地震を取り上げ、その発生状況や被害状況などを記述している。例えば、安政東海地震、安政南海地震、宝永地震などを詳しく書いてある。どうも地震はかなり周期的に発生していると強く感じるようになる。


 科学的に地震計を用いた地震観測は明治20年代から開始されているため、それ以前の地震は地震学では「歴史地震」と呼ばれるようだ。歴史地震の状況は如何にして得るのだろうか。どうしてその被害が詳しく分かるかと言えば、古文書に書き残された内容を解読することが出来るのだ。


 地震や津波など自然災害で死傷者や家屋倒壊などが生ずると、年貢の取り立てなどに大きく影響し、領主にとっては大問題であるため、必ず公的な記録文書が作られていた。そのため、江戸時代後半以降の被災を伴う地震はほぼ地震学では把握していると言ってよい。更に、被災を伴わない地震で、ただ揺れたと感ずるだけの有感地震もあるが、これらの記録の担い手は日記だ。当時はかなり多くの人が日記をつけていたと思われる。


 これらの日記を地震計として捉えてみることが出来る。地震学者都司氏が、江戸時代後期の1780年~1853年に江戸周辺で起きた有感地震の数を日記に基づいて調べた。この時期は前述した安政東海地震(1854年)(海溝型)、安政江戸地震(55年)(直下型地震)の直前だ。その結果、1795年~1824年有感地震数は少なく、1年あたり10回程度にすぎない。しかし、25~51年は年間20-30回に急増し、両地震の直前の1852、53年は10回未満という顕著な減少を示した。有感地震の急増期は、地下にひずみエネルギーの蓄積が進んでいることを示している。一方、急減した直前の2年間は地震空白域になっていた可能性が強い。これは時間的な空白だ。勿論、地震学では場所的な空白域もあり、そこでは次の地震の発生が予測される。


 実は、地震前の電磁放射の振舞いにも全く同じことが言える。私たちは学術会合でも強調しているが、地震の前兆には、(1)約1ヶ月から1週間程度前に発生する短期前兆と(2)1日前より発生する直前前兆があることを。しかし、直前前兆はすべての現象に起こるのではなく、ほんの数種の現象だけに起こることがわかっている。いずれにせよ、地震の前の、嵐の前の静けさが必ず存在するのだが、これを電波サイレンス(electromagnetic silence (quiescence))と名付けている。今私の所で共同研究しているギリシャ人ポチラーキス博士のグループも同じ概念を近年主張し、地震の前にはこのサイレンス(静穏期)が発生し、これは地震の発生に必須であると。地震の数は年のオーダでの空白だが、電波の方は地震の数日前のサイレンスだ。嵐の前の静けさは地下での破壊現象の臨界性を考えれば物理的に合理的な考えではないか。

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